私が尊敬する人の一人に、松下電器(現パナソニック)を創業された松下幸之助さんがおられます。
家庭の事情から小学校中退で丁稚奉公に出て、さまざまな苦労を重ねながら、後に日本を代表する大企業を育て上げられました。
同じ経営者として、まさに「経営の神様」だと思っています。
さて先日、小田全宏氏が書かれた「素直な心」についてのコラムを読み、改めて考えさせられました。
それは「素直になりなさい!」という言葉です。
子どもの頃、親や先生から言われた経験のある方も多いのではないでしょうか。
私も昔は「素直」とは、「人の言うことをちゃんと聞くこと」くらいに思っていました。
しかし、松下幸之助さんが説かれた「素直な心」は、少し意味が違います。
何でも無批判に「はい、分かりました」と従うことではなく、
自分の思い込みや感情にとらわれず、物事をあるがままに見る心ということなのです。
これが簡単そうで、実に難しいものです(笑)。
たとえば家づくりの工事中に何か問題が起きたとき、
「図面の表現が分かりにくかった」「お客様が勘違いされていた」
「(伝えたのに)職人さんがちゃんとしてくれなかった」
などと、つい原因を自分以外に求めたくなることがあります。
でも、そこで一度立ち止まって、
「こちらの説明が足りなかったのでは?」
「私たちの確認方法に問題はなかったか?」
「そもそも仕組みそのものを改善できないか?」
と考えてみるべきだということです。
すると、それまで見えなかったものが見えてくることがあると、私も考えます。
私たちは家づくりのプロですから、経験も知識もあります。
しかし、その経験が逆に、「今までこうしてきたから大丈夫」であるとか
「普通はこうするものだ」という思い込みになってしまうこともあるのです。
逆に、お客様の何気ない一言から、「なるほど、そんな考え方もあるのか!」
と気づかされることも少なくありません。
だからこそ、お客様の声に素直に耳を傾ける。現場で起きていることを素直に見る。
問題が起きたときには、まず自分たちにも原因がなかったかを考える。
これは会社を経営するうえでも、とても大切なことだと思っています。
先月の熊本地震から約1カ月が経ちました。
地震後、イオンモール熊本で起きた爆発事故では、いったん避難した女性従業員2人が、売上金を金庫へ移すために館内へ戻り、尊い命を失われました。
報道によると、勤務先の会社側も館内へ戻るよう求めたことを認め、謝罪されています。
もちろん、結果が分かった今だから言えることもあるでしょう。
しかし私はこのニュースを見ながら、
「もし自分が経営者として同じ場面に立ったら、社員の命を最優先する判断ができるだろうか?」
と自分自身に問いかけました。
売上金も会社にとっては大切です。しかし、人の命より大切なものなどありません。
そして問題が起きたとき、「あのときはこういう状況だった」、「こういう条件を付けていた」
と理由を探す前に、「自分の判断が間違っていたために、このような事故に巻き込まれてしまいました」
と自戒し素直に謝罪できる経営者でありたいと思います。
これこそが「素直な心」なのかもしれません。
松下幸之助さんは、素直な心になりたいと願い続け、30年ほど努力して、ようやく「素直の初段」になれると語られています。
30年で初段・・・。なかなか厳しい世界ですね(笑)。
さらに「素直の五段」ほどになれば、神様のような境地だとも・・・。
そう考えると、私など五段どころか、まだまだ白帯でしょう(笑)。
でも大切なのは、何段かではなく、「自分の見方がすべて正しいとは限らない」
と思えることではないでしょうか。
人間関係がうまくいかないとき。仕事で問題が起きたとき。
思い通りにならず、腹が立ったとき。
そんなときこそ、「もしかすると、自分にも原因があるのでは?」
と考えてみる。
その瞬間に、今まで見えなかったものが見えてくるような気がします。
私も経営者として、そして一人の人間として、
「素直の五段」は遠いとしても(笑)、
まずは「素直の初段」を目指して精進していきたいと思います。